精神科看護野郎の日記

精神科看護の日常やためになる知識・情報の提供をしています。

境界性パーソナリティ障害 背景 対応 対処

境界性パーソナリティ障害

本日は境界性パーソナリティ障害という病名についての解説・関わり方などを紹介していきます。

 

 


どんな病気なのか。

簡単には説明するのが難しいですが、敢えてザックリと言わせてもらうと

『超ウルトラメンヘラかまってちゃん』です。

 

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あの手この手を駆使して周囲を巻き込んで人間関係を崩壊に導くことも少なくありません。

 『あなたが好き!え・・・私のこと好きじゃないの・・・じゃあ死んじゃう!』グサッ

なんていうことや

『あなたの心臓をえぐりとってネックレスにしちゃうわ。そしたらずっと一緒にいられるもの』

みたいな、あいみょん的な思考になってしまう感じのあれです。

 

この例は極端ですが、病気と診断されていなくても、このような傾向にある人ってあなたの周りにもいるのではないでしょうか。

もしくは過去に関わったことのある人物の中に、あの人そんな感じだったかも…と思い起こさせる人物がいるかもしれません。

 

基本的に精神疾患というものは検査データなどでハッキリ分かるものではなく、本人の訴えや周囲からの評価などから診断されるものなので、非常に曖昧であったり、そのような傾向があるという人はいても病名はつかないことも多いのです。

基準として大事なのは、日常生活に支障をきたすものであるかどうか。これが決め手となります。

思考が極端であったりいつも『死にたい』とかTwitter で呟いていたとしても、ちゃんと日常生活を普通に遅れているなら病気ではありません。

むしろ思いの吐き出し口としてうまくTwitterを利用出来ていると私は思います。

 

さて、境界性パーソナリティ障害ですが、他者をいかにして振り回すのか。

①自傷行為

よく見られる行動です。周囲に構ってもらうために簡単な方法の一つとして大人気ですね。

リストカットが代表的ですが、急に過呼吸になったり、薬を大量に服用する・倒れこんでしまうこともあります

自分を傷つけることによって周りの人間は心配します。大丈夫?どうしたの?そんな言葉や自分を助けてもらえるよう操作をしようとするのです。

 

ちなみに自傷行為をする方が皆同じような理由で行為に及ぶ訳ではありません。自分を傷つけようとする人を色眼鏡で見て『ただのアピールだろ』と判断するのは危険です。

 

②豹変

自分にとって有益な人間か、自分を見てくれる存在なのか、それがとても大事です。最初は自分を大事にしてくれるようにするため相手を試すような行動や甘えるといった行動を起こします。ですが、自分の要求に応えてくれない時には豹変し、暴れたり泣き喚いたり自殺しようとしたりと過激な行動に出ることもしばしばです。

 包丁を持ち出して相手・もしくは自分をグサーッなんていうこともして、警察沙汰になりそのまま精神科病院に入院する、なんていうこともままあります

 

③認知の歪み

認知に歪みがみられることが多いです。言葉の受け取り方を拡大解釈したりねじ曲げて解釈したりします

 

このような特徴を持つ方と関わっていると周囲は疲弊してしまいます。

全てを叶えてあげられることは出来ませんよね。要求を飲んでいる間は良いのですが、それはどんどんエスカレートしていきます。そうすると振り回されて泥沼化してしまうのです。

 

どんな背景でこのような状態になってしまうのでしょう。

 

幼少期の家族関係が要因となっていることが多いです。

この病気を持つ方は『見捨てられる不安』がとてつもなく強いです。また『愛着形成不足』も原因となります。

親に見捨てられるような経験。虐待されて育ったケースも多く、親からの愛情を十分に受けられなかったため、人から愛されることを切望しており、突き放されることが恐ろしくて仕方がなくなってしまうのです。

自分の価値、基準が自分の中に存在せず、それを他人に依存している状態になっているのです。

他者から受けられる愛情だけが自分を形成しているわけです。

なので自分を持っていません。そしてその依存先となっている人がいなくなってしまったら自分を保つことは出来なくなるのです。

 

それでは困るのでどんな手を使っても相手を振りむかせなくてはならないのです。

 

ちなみにこの境界性という言葉は、神経症と統合失調症という病気の境界にある症状を呈することから付けられているそうです。

統合失調症とは全然違うように思いますけどね。

 

では、そんな方との関係はどうしていけば良いのか。

距離を取る 

出来るのであれば一番良いのは距離をとって関わらないようにする事です。

それが出来る距離間であれば迷わずそうしてください。

 

傾向を知る

しかし距離をとることが出来ない相手であればどうするか。

まずは知識としてどういう症状があるのか、何を目的としているのかを知っておくことが大事です。

訳も分からず振り回されるのと、なるほどこういう意図や背景があるんだなと知っていて振り回されるのとは全然違うものです。必要な場所に相談することも出来るようになるでしょうし、自分の中で理解できれば、相手へというよりは自分の負担への対処行動に移すことが出来るようになることにも繋がります

 

アドラーの心理学が最近話題となっていますが、関わり方のヒントがこの中にはあります。

 

他者の問題と自分の問題・課題を分離するという考え方です。

必要以上に相手に介入しないようにする事が大事で、他者の問題はその人自身が乗り越えなければならない課題と捉えましょう。

 認知行動療法

また、このブログでも紹介していこうと思っておりますが、認知行動療法を実践することも大いに役立つと思います。

認知の歪みがあることを先に紹介しました。考え方の癖を知り、対処できるように実践していくことを助ける心理療法が認知行動療法です。

境界性パーソナリティ障害を持つ方もそうですし、その方と関わっている人にも助けになると思います。

 

本人の苦しみ

周りの人に迷惑をかける存在という面が強いのは、確かにそうですが、本人が不安で苦痛を抱えている事もまた事実です。

自分を持てないこと、他者に依存しなければ自己を確立出来ない不安定な自我で生活していくのは本当に難しいでしょうし辛いことでしょう。

 

自分自身が困っていることを自覚できれば、必ず良い方向へ進むための材料になります

 周囲が出来ること

周りとしてはそれを突きつけることは難しいですが、きっかけを与えることはできます。あくまでも自分で気付く事が大切なので、どういった関わりが気づきに繋がるのかは分かりませんが、助けたいという気持ちがあるのであれば、まずはその人のことをよく知ることです。

そして出来ない要求は出来ないと毅然な態度で振る舞うことです。

自分も相手も少なからず傷付く経験を伴うでしょう。

しかし、逆に言えばその覚悟がないのにその人を大切にしたい。一緒に生きていきたいと考えるのは辞めておいた方が良いと言わざるを得ません

中途半端な気持ちで付き合うのは控えましょう

 

真剣に付き合うのであれば、誰と関わるにしても同じような事が言えるかもしれませんね。

 

それではこのぐらいで失礼します。