ユマニチュード 認知症ケア 介護負担の軽減に向けて
今回は介護負担を軽減させられる・要介護者が心地よく介護を受けられる方法、『ユマニチュード』についてお話ししていきます。
ユマニチュードという言葉を知っているでしょうか?
私も最近までは知らなかったのですが、これは認知症患者のケアにおいて近代的な優れた考え方なので是非とも紹介させていただきたいです。
これからの世の中、高齢社会になっていき介護の需要がどんどん増えていきます。
認知症の周辺症状、いわゆるBPSD。これに悩まされている方は多いと思います。
認知症が進行していくと幻覚や妄想、夜間せんもうなどの症状から暴言や暴力、介護拒否、失禁などといった介護をしていてとても悩ましい事態が起こります。そうすると介護者の負担は増えていき、疲弊してメンタルをやられてしまったり虐待をしてしまったりするケースもありますし、これからこういう問題は増えていく可能性が高いです。
若い世代にとっては本当に未来への希望を持てなくなる要因の1つかもしれません。
高齢の方にとっても介護需要ばかりが増えて適切な介護がされなくなるのは不利益ばかりになってしまいます。
そんな時に救世主ともなる概念がユマニチュードです。
ユマニチュードとはフランス語で『人間らしさ』を意味します。
介護者は辛いケアをし続けていくうちに、認知症者を人間として見ることが難しくなってしまいがちです。
言葉が通じない
良かれと思ってしていることをむげにされてしまう。
何の見返りもない
暴言を吐かれる
食事を拒否される
大声で叫び続ける
暴力を振るわれる
こんな状況が続いたら、その負担は計り知れないものになります。
人間らしさが失われていき、介護者も人間らしく接することが難しくなっていく。
こうなると悪循環でどんどん悪い方にいってしまいます。
私も仕事柄、認知症の人と関わる機会は多いのですが、出勤するたびに自分のことを忘れてしまっているので、覚えてもらえることはなく、会うたびに暴言を繰り返される・水をかけられるといった経験をしたこともあり、本気で仕事に行くのが億劫になりました。
ですが、仕事が終われば離れられるのでまだましです。これが家族であり、延々と続く状況にあったら私ならたぶん病みます。
虐待は絶対にダメですが、そうしてしまうほどに追い込まれている人を私はそこまで強く批判することは出来ません。想像を絶するような地獄と毎日付き合ってきたのかもしれません。自分の精神を削りながらも頑張ってきたのでしょう。
誰にでも同じ状況に立たされる可能性はあり、他人事ではないのです。
ユマニチュードの接し方とは
①出会いの準備
認知症が重度になってくると、人の顔を覚えていることも難しくなります。
初めて会う方に接していくような心構えで、部屋に入る際にはノックをし、きちんと挨拶をする。自分が何者なのかを伝えることも大事です。
急に知らない人がづかづかと入ってきていきなり食事を口にもってこられ、食べろと言われても普通嫌がりますよね。
『お前誰だよ。ちょっ!やめてなんなんこの人。めっちゃ嫌がらせしてくるやん!』って感じに内心思っているかもしれません。
この最初の手順が実はかなり重要になってきます。
②見る、視線を合わせて話をする、何をしていきたいのか分かるような見せる
顔をみて挨拶するのはごくごく当たり前のことですよね。これが認知症者に対してはなおざりになることが多々あります。
実際にケアをしている介護者、看護者でも認知症者にケアをする際相手の顔を見ている時間はものすごく短いそうです。あるいは全く見ないこともあるようで、話しかけるということもない場合も多いです。
私も思い返してみると必要なケアに迫られていて、そのケアをしなきゃっていう意識ばかりになり顔を見てケアの説明をするということは出来ていなかったです。
ただ話しかけるにしても高齢のため耳が遠かったら聞こえませんし、早口が聞き取れないこともしばしば。伝えるつもりが全く伝わっていない、そんな関わりになっている可能性もあります。
さらに視覚も衰え、視野も狭かったりします。そこに配慮しながらゆっくり低めの声で話しかけるようにしたり、ちゃんと視界に入るようにすることで安心させられる効果もあります。
視界が狭い高齢者にとって普通にスプーンで食事を口に持っていっても、急に口もとにものを当てられたという感覚しかありません。
『何この人怖っ!急に目の前に現れたし何言ってるかわからん。宇宙人じゃね?宇宙人にやべーの食わされる。何か埋め込まれる!さらわれる。侵略されるー』ってなってますきっと。
なので、先に見えるようにスプーンを持って食べ物を用意していることが分かるようにする工夫が大事です。
オムツを替える際、トイレに誘導する際、薬を飲んでもらう際、などなどどんな時でも同じです。
③触れること
ユマニチュードの技術として大事なこと。その3つ目として相手に触れることがあります。
コミュニケーションがうまく取れない、その力が弱くなっている人も多いですが、触れられるという感覚はそうそうなくなりません。
ケアに必要な部分だけではなく、コミュニケーションとして肩や手、顔、足などに触れてあなたを大事に思っていますよという気持ちを伝えていくことが出来るのです。
初めは肩や背中などあまり敏感ではないところから触るようにしましょう。順番も大切でいきなり顔を触られるのは嫌でしょう、陰部だって嫌ですよね。いきなり訳の分からない人から訳もわからず陰部洗浄の目的だとしても、普通にいきなり触られたら恐怖です。
『やべーって!犯される!まじ助けて!』と、あなたのことを痴漢だと思っていることでしょう。
表現がうまく出来ないだけで、快・不快の感覚は普通に人間の持っている感覚と同じなんです。
毎回いちいちこんなことをするのは面倒だと感じるかもしれませんが
こういった関わりの継続が認知症者のBPSD改善にも役立ち、介護負担もかなり減ることにつながっていきます。
今はまだそれ程一般的な考え方ではなく、知らない人の方が多いでしょうけれど、これからこういった考え方が世の中に浸透していき、誰もが確かな技術を持って高齢者と関わることが出来たらこれからの未来が明るくなっていくと思います。
そんな訳で今回はユマニチュードについて、でした。