精神科看護野郎の日記

精神科看護の日常やためになる知識・情報の提供をしています。

自傷行為の理解 手首切って生きた心地してんじゃねーよ

今日は精神科看護師として、自傷行為とは何なのか。

自傷行為をすることの意味は何なのか。そういった疑問に答えるべく自分の考えを述べていきたいと思います。

 

  • 自傷行為って何?

知っての通り「自傷行為」っていうのは読んで字のごとく自分を傷つける行為のことですね。

自傷行為の定義を調べてみたんですけど、これいった定義は見つかりません。研究者によって定義が異なり、意味についても変遷しているためですね。

ある著書には

「自殺以外の意図から非致死性の予測をもって、故意に、そして直接的に自分自身の体に対して非致死的な損害を加えること」

を定義としている物があります。

方法としてはとてもたくさんあります。

①リストカット

代表的な自傷行為の1つですね。BIGMAMAってアーティストの週末思想という曲の歌詞に「手首切って生きた心地してんじゃねーよ」なんてものがありますが、関係ないけどこの歌詞好きなんですよね。

昔は「リストカット症候群」とリストカットに限局した病態として捉えられていたこともあるそうです。

今では自傷行為はリストカットに限るものではなく体の至る所で自分を傷つける行為が存在することが明らかにされてその病態は使われなくなっています。

②薬物乱用

よくODとかって言うんですけど、オーバードーズ、つまり過剰の薬物摂取のことですね。

③毒物摂取

ODは大量に薬を摂取することですが、これは単純に毒物を服用すること。

結構聞くのは農薬を飲んで死のうとすることなどがありますね。ただ、注意点として自殺行為と自傷行為はまた別になるので、毒物を摂取して自殺した場合は自傷行為とはまたちょっと違うことになります。

④抜毛

髪の毛とか抜いちゃう行為ですね。精神疾患の中に抜毛症なるものがありますが、これも自傷行為の一つとなります。

⑤過度なダイエット(拒食・過食・嘔吐)

食事に関しても意図して健康に害する行為をすることは自殺を目的としてモノとは外れる自傷行為の一つと言えますね。

 

  • 自傷行為をするのはなぜ?

精神科で働いていても自傷行為に関して十分に理解している人は結構少ないかもしれません。

自傷行為を単に周囲の人から注目を集めたいアピールだと捉え、治療に活かせないことが結構あるように思います。

目に見えて行われる自傷行為の多くは確かにアピール性の物がほとんどですが、学生が自傷していてもそれを学校側が把握しているのは1%にも満たないそうです。

自分だけしか知らない自傷行為が実は大半なのです。

そう考えると単にアピールのためだけの自傷行為というものは氷山の一角でしかないことが分かります。

自傷行為を繰り返す患者さんの中には他者へのアピールとして行っているものではなく、自傷をすることで潜在的な心の痛みを顕在化するために肉体の痛みに変換している人がいます。

何かわからないもやもやした辛さよりも、何が辛いのかが分かる直接的な痛みというものは気分の安定につながる可能性もあるということです。

人は見えないものに恐怖する生き物です。それなら見えている恐怖の方が幾分ましなんですね。

実際にいるか分からないお化けより、お化け屋敷にいるお化けの方がいるべくしているために安心できるのです。

私は個人的には見たことのない霊よりも実際にいるお化け屋敷のお化けの方が怖いですが・・・だって霊とか実際に見たことないもん

でもいるかもしれないと言われてその現場に行くのは、現れないと99%思っていても残りの1%を恐れてしまうでしょうね。

 

なぜ自傷行為をするのかの答えが今のところ2つ出てきました

①周囲に気遣ってほしいというアピール

②自分の精神安定のために行うこと

 

その背景はというと、どちらも不安からくるんですよね。

不安を持っている人ならだれでも自傷行為をする可能性があるわけです。

極端な話、自傷行為という概念自体を知らない人は自傷行為をする可能性も低いと思います。

今は情報社会であるがゆえに皆が自傷行為という言葉を知っている。

知っているからその行為に及んでしまうというのも理由としてあります。

 

同じ不安を抱えていても自傷行為に走る人とそうでない人の違いは何なのでしょうか。

 

パーソナリティ的な要因と発達過程の要因が大きく関係しています。

やはり境界性パーソナリティ障害を代表とした人格障害を持つ人の中には自傷行為に及ぶ可能性は高くなり、アピール性の強いものになります。

発達過程では、周囲の環境による部分が多いでしょう。不安やストレスを多く抱える環境にいることや周りの友達関係の中に同じような境遇であったり、自傷をしている仲間がいれば必然的に自分も影響されて自傷行為をする可能性は高くなりますね。

自分の精神安定のために行う場合においてはその対処法が自分にとって良いと感じているからこその行為であることを考えると、それ以外で発散できる人は自傷する可能性は低くなるでしょう。

 

ですが若いころから自傷行為をストレス対処として取り入れてしまった場合はなかなか抜け出すのが難しくなってしまいます。

自傷はどうやら中毒性が高いようで、何かに依存する傾向のあるパーソナリティを持つ人がその行為をする可能性が高くなります。

人に依存する。煙草に依存する。お酒に依存する。

こういった依存傾向の高い人は自傷行為にも依存する率が高くなるので要注意です。

 

予防的な観点で行くと、やはり趣味を持つことやストレスに対処するすべを多く持つことが大事になります。

不安やストレスへの対処が自傷リスクの軽減には一番大事なことと言えるでしょう。

 

習慣化してしまっている場合にはそれを断ち切らなくてはならないので、なかなか難しくなってきます。

薬物依存などと同じように強制的にそれが出来ない環境を与えるのも一つだと思います。

 

今回はざっくりと自傷行為に関しての考えを示してきましたが、もっともっと深く考えると考えられることはたくさん出てきます。

 

自傷行為をすることに困っている人

周りの人が自傷行為をして困っている人

 

それぞれの視点から今度は対処法も示していけたらと考えています。

 

今回はこの辺で失礼いたします。