認知行動療法① 精神科看護師による説明
ブラジル人のコンビニ店員にチャックが開いていることを指摘されて真っ赤になったことがある精神科看護師バラキです。
日本人ならなかなか指摘が難しいことでしょうけど、異国の文化がそうさせたのでしょうか。公衆の面前で「やめてよー恥ずかしッ」ってなったのですが後に認知の修正を図ったところ、親切心だったんだなとか異国の文化に触れることができたのかもしれないラッキーと思うことや、こうやってネタにすることも出来て得したじゃんと思う中でこれは嫌なエピソードでは断じてなさそうだぞと前向きな気持ちになれました。
というわけで今回は認知行動療法について、これから数記事に分けてお伝えしていきたいと思います。初回は認知行動療法ってなんなの?認知へのアプローチの実際を軽く触れていきます。
私は精神科看護師として、患者さんや社会復帰に向けて頑張っている人に向けて認知行動療法の講義をしていたりするのです。その経験をもとにお伝えしていきますね。
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日々、どんな人でもいろんな体験をして悩んだり辛い出来事に頭を悩ませることがあるでしょう。
それが過度になると精神を病んでしまい集中力の低下・意欲の減退・後ろ向きな考えに傾倒してしまうようになってしまう。さらには精神面での不調だけではなく、身体的にも頭痛や体の痛み・発熱などの症状が現れることも珍しくありません。
精神と身体は相関関係にあり、気分の不調が体にも悪影響を及ぼすことになるのです。
今世界中で新型コロナウイルスが流行しパンデミックを起こしていますが、毎日ニュースで暗い話題が繰り広げられています。
新型コロナウイルスの蔓延はたしかに恐ろしい・歴代にも名を連ねるんじゃないかレベルに深刻な問題でしょう。
しかしコロナに感染していない人間にとっては予防することや、今できることを考えるのが重要なのであって、感染するのではないか・今後どうなっていってしまうのかという不安や恐怖におののいている場合ではありません。
変に暗い情報を取り入れて、自分自身のメンタルに影響を及ぼしてしまうことが悪循環となり得るのです。
というのは悲観的に物事を考えることから免疫力が落ちてしまい、より感染しやすくなるし、コロナとは全く関係なく風邪を引きやすくなってしまったり精神面での変調をきたす恐れもあるからです。
なので情報を取り入れること自体が悪いわけではなく、その情報を自分の中にどう取り入れるかが大事だと思います。
自分自身の健康維持のために情報を得る・対策を講じられるように意識して行動をとることをおすすめします。
そして出来る限り前向きな視点をもって過ごすようにしましょう。
前置きが長くなりましたが、今日は認知行動療法についてです。
認知行動療法って何なの?訳わかめ意味こんぶだわーという人に向けて
認知行動療法って何?ということですが、聞いたことはあるけれど・・・という人は多いんじゃないかと思います。
最近では書店にも認知行動療法の本がたくさん並んでいたりもしますからね。
でも興味のない人、健康な人にとっては療法という言葉が付けられているだけで、自分にはさして関係ないものと思うでしょう。
しかしこれは病気の人にしか使えないものでは決してなく、おそらくどんな人間に対してでも効果のある考え方なんです。
認知行動療法は読んで字のごとく、『認知』と『行動』にアプローチした療法ということになります。
私たちは普段の生活の中で様々なことを考えたり、行動したり、感じたりしています。
認知行動療法とは認知(考え方・ものの味方・受け取り方)・行動への働きかけによって気分の改善を図る療法です。
認知は人それぞれ違う
例えば朝、職場について上司に「おはようございます」と挨拶をしたけれど返事がなかった。という状況があったとします。
その際にどんな認知をするでしょうか。
パターン1「無視された・・・俺は嫌われているんだ・・・」
パターン2「うざっ!社会人として挨拶ぐらいは返せや!」
パターン3「あれ聞こえんかったのかな?もうちょっと声をはって今後は挨拶してみよー」
パターン4「別に何の感情も抱かぬ」
パターン5「あとで挨拶返さなかったことをネタにしてやろ(笑)」
等々、同じ状況であっても人によって感じ方・捉え方は違います。
そしてそれぞれのパターンによってその後の気分や、行動も変わってくるのです。
パターン1では気分は嫌われていると感じているわけですから、普通につらいですし、今後その上司とは距離を取るようになるかもしれません。びくびくして上手く仕事の話ができなくなるかもしれません。
パターン3では自分に非があったのかなと考えつつも前向きな視点を持っています。翌日には切り替えてはきはき挨拶をすることで円滑な人間関係が築けるようになるかもしれない。
このように認知が初めにあり、その後の気分や行動も左右されてくる。認知と気分・行動はすべてつながりを持っているのです。
認知へのアプローチ
認知行動療法では認知と行動にアプローチをしていく療法だと前述しました。
まずはその中の認知へのアプローチを考えていきましょう。
先ほどの例ではパターンをいくつか紹介しました。
認知の仕方はそれぞれ違いますが、最初から楽観的に考えられるものでもなく、自動的に思いついた・考えてしまうことはなかなか変えられるものではありません。
これを自動思考と呼びます。
これはその人も今までの人生を反映し、作られていった考え方なのでこれ自体を変えるのはよほどの年月を要するでしょう。
ですが、後で振り返ってみて、別の考え方はないだろうかと思案してみることはできます。
パターン1で
「自分は嫌われている・何か上司を怒らせるようなことをしたのだろうか」
という認知について別の見方をすると
「仕事に集中していて聞こえなかったのかな」
「この人はいつもそんな感じだから別にそんなに気にすることはないか」
「何この上司。何か言ってるけど全く耳に入らんね。俺の独自の視点が分からない愚者とみえる」
と考えることが出来ると気分も不安や落ち込みといったマイナスな感情から安心に変えることにつながります。
これは1つの例ですが、様々な状況・環境でも考え方を負担の少ないものに変換することは可能です。
もちろん自分の思考を変えるのはそう簡単なことではありません。即効性のある療法ではないのです。ですが繰り返し練習していく中で楽に思考することが出来るようになっていくのは間違いありません。
何か月・何年と続けていく中で日々の生活が楽になった、いろいろなことがうまくいくようになった。以前なら落ち込むような状況でも、むしろ楽しめるようになった、認知行動療法を受けた方からはこういった感想が寄せられることもあります。
次回ではさらに認知へのアプローチを具体的に
今回の認知行動療法はここまでにします。
何事も休憩をはさみながらホッとできる時間を作り、ゆとりある人生を送っていきましょう。
多少はそのお手伝いができるよう次からも認知行動療法についての解説はしていきたいと思います。
次も認知へのアプローチという形で説明をしていくつもりです。